僕は長年の研究の末、新種の花の栽培に成功した。温室いっぱいに咲く新しい花を眺め、達成感を噛みしめる。
さっそくテレビ電話で、遠くに住む両親に研究の大成功を伝えた。
しかし、そこで気がついてしまった。テレビ電話の画面の端に映る鉢植えの花に。
「ああ、この花は私達の故郷の花よ。故郷の村はお前が幼い時にダムの底に沈んでしまったけど、同郷の人があの村にしか咲かない珍しい花の球根を保護していて、この間分けてくれたの」
母は何気なく言った。
なんてこった。僕はきっと幼い頃に見た花の面影を無意識に追い求めていた。
僕の作った花は故郷の花と同じ。新しくはない。新しくなければ意味はない。
僕は温室に灯油を撒き、火を付けた。



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